土地と建物の名義が違う場合の売却方法や名義変更手続き方法

土地と建物の所有者は、多くの場合同一人物ですが、家庭の事情や相続、贈与などの理由により、土地と建物の名義が異なるケースも存在します。日常生活では大きな支障が出ることは少ないものの、売却や税金の手続きにおいて問題が発生する場合があるため、注意が必要です。


土地と建物の名義が違う場合に起こる問題

土地と建物の名義人が異なる状態でも、通常の生活に支障はありません。しかし、不動産を売却したい場合や税金を支払う際には、手続きが複雑になる可能性があります。

例えば、土地と建物をひとつの不動産として売却する際には、両方の名義人の同意が必要です。名義人同士が売却に合意すれば、名義を変更しなくても同じ買主に売ることが可能です。ただし、土地と建物それぞれで別々の契約を結ぶ必要があり、買主側の手間が増える点をあらかじめ説明しておくと良いでしょう。

また、土地や建物の所有者が亡くなっている場合には、まず相続手続きを行い、相続人の同意を得る必要があります。相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行い、土地や建物の名義を誰か一人に集約しておくと、売却手続きがスムーズになります。


名義を統一してから売却する方法

土地と建物の名義をどちらかにまとめることで、通常の不動産と同じ手順で売却できるようになります。例えば、土地の所有者が建物を購入し、名義を土地所有者に統一する方法があります。

このとき、特に親子間や親族間の取引では、相場価格より極端に安い価格で取引すると、贈与と見なされて贈与税が課される恐れがあります。贈与税は課税財産額によって10%〜55%の累進課税となるため、適正な価格で取引することが大切です。

売却によって利益が生じた場合には、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。居住用の不動産であれば、3,000万円の特別控除が適用され、課税額を抑えることが可能です。


委任状を利用した売却

名義人が高齢や入院などで契約に同席できない場合は、委任状を作成して代理人を立てる方法があります。委任状には、不動産の情報、売却条件、委任内容や有効期限、委任者と代理人の氏名・住所、実印の押印などが必要です。契約時には委任者・代理人ともに本人確認が求められます。

委任状を使えば代理人による売買契約が可能ですが、なりすましによる不正売却を防ぐため、不動産業者や司法書士が契約時に本人確認を行います。マイナンバーカードや運転免許証など、本人確認書類を準備しておきましょう。


土地と建物を別々に売却する場合

土地と建物を別々に売却することも不可能ではありません。ただし、所有者が異なる土地や建物は利用価値が低く、買い手がつきにくいため、売却価格も下がる傾向があります。需要の少なさから、土地と建物を分けて売る方法はあまりおすすめできません。


税金の扱いについて

土地と建物の名義が異なる場合、売却や保有に関わる税金の扱いも複雑になります。

消費税

  • 土地の売却には消費税がかかりません。
  • 建物には課税対象となりますが、個人間の売買であれば非課税です。
  • 事業用の建物や課税業者が売買する場合は消費税が必要です。

贈与税

  • 相場からかけ離れた価格での親族間取引では、贈与とみなされる可能性があります。

固定資産税

  • 固定資産税は、土地と建物それぞれに課税されます。
  • 名義人ごとに納税義務が発生し、納税通知書もそれぞれに送付されます。

親の土地に子ども名義で家を建てる場合、借地権が発生したとみなされます。権利金を支払わずに地代だけを払うと、贈与と判断される可能性があるため、「使用貸借契約」を結んでおくと安心です。


名義変更の手続き

名義を統一するには、売買、贈与、相続などを原因とする登記変更が必要です。必要書類をそろえて、対象不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。

必要書類には以下が含まれます。

  • 登記原因証明書
  • 登記識別情報
  • 印鑑証明書
  • 住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 戸籍謄本(必要に応じて)

手続きが不安な場合は司法書士に依頼することも可能です。司法書士の報酬は5〜7万円程度が目安です。登録免許税は不動産評価額に応じて計算され、相続の場合は0.4%、売買や贈与の場合は2%です。


注意点

住宅ローンが残っている場合は、抵当権が設定されているため、金融機関の承諾が必要です。

離婚時の売却では、土地と建物の所有者双方の合意が必要です。夫婦共同名義の場合は、両者の同意がなければ売却できません。

また、相手の名義人と連絡が取れない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう手続きを取る方法もあります。申し立てには弁護士への相談が推奨されます。


まとめ

土地と建物の名義が異なる場合、普段の生活で困ることは少ないものの、売却や税金の面で手間やトラブルの原因となることがあります。将来的に売却を検討している場合は、早めに名義を統一しておくと安心です。手続きに不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。

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